封印

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 黒い毛で覆われた頭が三つある犬――地獄の番犬[ケルベロス]を筆頭に、その後方には手下らしい狼が五匹。それが今回の標的である、悪魔。    少年が鞘を抜こうとした瞬間、先手を取るように地獄の番犬の中央の頭が天に向かって雄叫びを挙げた。  低音で鳴り響くそれは、戦闘開始の合図。    五匹の狼が土煙を上げて一斉に飛び掛かる。  少年が後方に跳躍して間合いを図ろうとするが、間に合わない。    一匹が地面を蹴り上げ目潰しをし、もう一匹が飛び蹴りをして怯ませ、残りの三匹が鋭い牙や爪を少年の腕、太股に喰い込ませる。  特化した前足は、獣が持つ元々の俊敏さを更に上げているのだ。    クソっ、と剣を振るって狼共を薙ぎ払うが、足に深手を負った少年は膝が折れ、地面に跪いた。  狼個体の力はそこまで強くはない。しかし、敵ながら称讚に値する連携攻撃と頭脳プレイ。    長期戦は厄介だ。先ずは、司令塔の地獄の番犬を始末しなければ……。    血が流れる。だが、思考を流すことはなく、冷静に、躊躇いなく、少年は考えた。    地面から顔を上げ、足取りをふらつかせながら立ち上がる。  辺り一体の酸素を吸い込むと、両の頬を極限にまで膨らませて息を吐き出した。それは海底より遥かに深い、深呼吸。    心を落ち着かせると、顔の前に刀を構えた。
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