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「結婚するヤツが独身女にベタベタすんじゃねぇよ」
そう言ってジョッキを3つ軽々と持った武が、私と徹也の間に隙間を作った。
「いいじゃんかよー俺はもう、女遊びももう出来ねーんだよ」
風俗どころか、キャバクラにすら行ったことがない徹也が、武からビールを奪うと私の肩を抱いた。
「お前にそんな勇気無いだろう」
飲んだ後や、女勢が帰ることになったとき、他の3人が悪ノリして風俗ヘ行こうと言い出したときも、徹也だけは頑なに断った。
その徹也が珍しく浮かれている。
武は諦めて、私の方をみた。
私は大丈夫と、軽く頷く。
「なんだよ、お前らアイコンタクトか、そういう関係か」
珍しく絡み酒の徹也に、真奈美がちゃちゃをいれた。
「徹也、女遊びがしたいなら、マナが良い子紹介してあげようか」
真奈美は学生時代、ずっとキャバクラでバイトしていた。
「いや、俺は嫁さん一筋!」
徹也の言葉に、私の胸が再び揺れた。
今更
今更なんだ。
私は武の持ってきたビールを一気に喉に流し込んだ。
「おお、良いねー山岡、今日は飲むぞ」
徹也は仲間内で唯一、私を名字で呼ぶ。
高校の時から10年間、私と徹也の距離はそこから変わらないまま。
あのときのまま。
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