『紅短編集』

『アリス～鏡の中の迷宮(ラビリンス)～』‐忘却の王エンドレス‐

バンダースナッチが消えて行く。ジャバウォックも消えて行く。私を誰も見ていない？そんな事ない。ジャバウォックが私を見てる。ジャバウォックが私を見てる。その爪で、その牙で、私を襲うつもりなの？ジャバウォックが私を見てる。ジャバウォックが私を見てる。どうしていつも擦れ違う？本当に私を見ているの？きっと離れて見ているの。陰に隠れて見ているの。怖い怖い怖い怖い。ジャバウォックが私を見てる。ジャバウォックが私を見てる。

ジャバウォックが消えて行く。バンダースナッチと消えて行く。ジャブジャブ鳥は何処行った？ジャブジャブ鳥、ジャブジャブ鳥、今のあなたはシロウサギ。昔のあなたはジャブジャブ鳥。そうね最初はシロウサギ。あなたは何処に向かうのかしら？私を誰も見ていない？ジャバウォックが私を見てる。ジャバウォックが私を見てる。陰に隠れて見ているの。シロウサギ、シロウサギ、あなたは何処に向かうのかしら？私は右よ、右に行く。どうして私は左にいるの？右にいるから左にいるの？そこから先も右左？左の私は左右？何処まで行っても右左？今の私は右左？いいえ私は左右。上から見れば、どちらも右よ。私はアリス、あなたは誰？あなたがアリス？私は誰？此処は何処？私は誰？私は右よ右にいた。私は左にいたわ。私は右の左にいる。左の左の右の左は私だわ。私の名前は何かしら？私の名前は何かしら？エンドレス、エンドレス、私は何時まで右左？途中で私は左右。終わることなき右左。

アリスが何処かに消えて行く。アリスの中で消えて行く。誰が私を見ていたの？知らない誰かが見ていたの。

～Mitachi Kanon～