月夜のおみゆき

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縁側に月の君が座った 動けずにいると月の君は自分の横をポンとたたき 「隣りへ」 微笑み座れと促された 「はっはい…」 おそるおそる座る 「今高天が原に…いえ神々に危機が訪れようとしています」 月の君は天を仰ぐ 「神殺しをしようとしている者がいるのです」 神殺し? って出来るの? 「神話を読んだことは?」 朔らしき男が口をはさむ 「あ…一応あるけど」 そんな話あったような あれ…でもその体からは他の神が生まれるんじゃ また月の君がほほ笑む今度はとても悲しい笑み 「それは神の御技だからこそ。悲しいことですが、今人間に忘れられ力を弱くした神々がたくさんいます」 信仰が神を神たらしむ いつか誰かに聞いた 確かに今の世界は科学やら技術やらが進歩したせいか それらで証明できない物を信じない人は多い 「神を殺し自らを唯一無二の神として新しき世界を作らんとする者が、…現れたのです」 「その者の名は…睦皇」 桜妃のキレイな顔が曇った 「何ということ…」 「しってるの桜妃?」 「内平一族を壊滅させた者の名です…忘れることができましょうか」 「うちを?」 兄や姉たちの最後と共に黒い影が頭によぎった おぼろげながらも焼き付いたあの影こそかたきの姿だろう
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