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振り向かずに歩いた。
背負ったリュックがやけに重く感じて、それを理由に何度も足を止めた。
自分で決めたのに。
あいつをおいて行くことを。
今ならまだ間に合うかな。戻って、なにもなかったようにおはよう、って言って。今ならまだ。
なんて卑怯な考え。
嫌になる。
昨日の夜、ゴンに聞いた。『なぁゴン。オレが死んだらさー、どうする?』
ああ、そんな顔させたいわけじゃないんだけど。
『んな顔すんなって、もしもの話だよ。』
もしもの話、言ってすごく痛くなった。
『お前はオレがいなくても大丈夫だよな。』
強いから。
オレと違って。
お前は人を引き付けるから、いつもまわりには仲間がいて。だから、オレがいなくても、こいつのこと守ってくれるやつはいるだろうし。
『ごめんごめん、もう寝よっか、な?』
これ以上話すと自分が泣きそうになったから、今日で最後なんて思いながら腕の中で眠るお前の顔を忘れないように焼き付けた。
思い出すと痛くてたまらなくなって、やっぱり離れたくなんかなくて、この思いはどうしようもなくて。
だけど、一緒にはいられない。
いちゃいけないんだ。
オレたちは。
住む世界が違いすぎた。
あいつはオレにとっちゃ、眩しすぎたんだ。
そう言い聞かせて、重たい足を前へ前へと進める。
不意に下を向いてはじめて気が付いた。
ああ、泣いてたんだ。
───…
戻って来ちゃったなあ。
もう、どうやってここまで来たかも覚えていない。
とにかく涙が止まらなくて痛くて痛くて痛くて。
気付いたら見慣れたあの門の前に居た。
その門から、中の冷たさを感じて。
懐かしい気分になった。
二度と戻って来ないと思っていたのに。
目の端に溜まった水を服の袖で乱暴に拭って、もう戻れない、戻らないことを誓い、重い門に力を込めた。
(お願いだから探さないで、)
fin.
(080812)
──────
キルくんはほんと自虐的なことばっかすると思うのです。
ゴンとは正反対で、感情を押し込めてゴンのことを一番に考えて行動するっていう。
素直になんなよねえ。
駄文失礼しました。
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