始まりは、軽口

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何て事はない、いつもの無駄話しからソレは始まった。 「え~っっっ?じゃあオレは天狗なら見た事あるぜぇ」 軽く流されるであろうその発言は、皆の異様な程冷たい視線で返された。 「またかよ」 「ホラ吹き誠司の始まりだあ~」 シラけムードの中に “ホラ吹き誠司” というフレーズがクラスメート達の笑いを誘っていた。 そうオレはホラ吹きだ。 なんでもかんでも大ゲサに言い、注目をあつめようと平気で嘘もつく。 いつもなら「うっそー」と言ってオドケる所だが、 いかんせん、天狗を見たのは本当だった(ハズ)なのがいけなかった。 「嘘じゃねーよ。オレ、子供ん頃福島の山ん中に住んでただろ?そん時にさ…」 「じゃあ写メってこいよ」 「は?」 オレの大演説を遮るようにニヤつきながら、 さっきまで心霊スポットで幽霊を見たと話してた奴が言った。 そうだこいつが幽霊見て来た。なんて大騒ぎするから、 オレは天狗を見たなんて口ばしったんだ。 こいつのせいだ。 なのになんだ?ムカつく! 「ああイイゼ写メって来てやるよ!」 そう捨て台詞を吐いてオレは教室を出てしまっていた。 「ばっかじゃねーの?」 そう、オレはバカだ。
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