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子供の頃、家の中は超~賑やかだった。
ウチの家族とは別に、父さんの弟、誠吉叔父さんの家族も一緒に住んでいたからだ。
「大風呂敷のホラ吹き誠吉」って大人達は悪く言ってたけど、
私は大袈裟な話しでいつも皆を笑わせてくれる誠吉つぁんが好きだった。
誠吉つぁんは叔父さんと呼ばれるのを嫌がっていた。
いつまでも「お兄さん」というか、「若者」扱いされたい。
とか言って。
誠吉つぁんのお嫁さん、春子さんも、ウチの母さんとは違って美人で優しくて、
美容師をしてるとかで、お洒落なお姉さんみたいで大好きだった。
ウチの母さんはヒガミでいつも陰口言ってたけどっっっ
従兄弟のせーちゃんもウチの兄さんよりやさしいし、
いつも一緒に遊んでくれるから大好きだった。
忘れてたようで忘れていない。
幼稚園の制服をせーちゃんに見せてあげようと茶の間のふすまを開けたら、
「せー達は東京に引越したよ」
「由利~帰るけど起きてるぅ?」
ダルそうに最近よくつるんでるクラスの子達に声をかけられた
「うぃ~っっ。帰る。帰る」
また、あの頃の夢を見ていたようだ。
あの日から、誠吉つぁん達家族の話しがウチで出る事はなかった。
兄さんがふたりきりの時にポツリと、
「誠吉つぁんは東京でもタクシーの運転手してるんだって」
「春子さんが○○のヘアメイクしたんだって!」
などとプチ情報を教えてくれるけど。
せーちゃんは私のいっこ上だから高校2年か。
東京の高校いいなあ~
なんてぼんやり考えながら皆の後について行く。
「今日も暇だなあ」
「なんかイイ事ねえ?」
おきまりの倦怠会話にテキトーに合わせていたら、
「あーっっ」
一番前を歩いてた子が素っ頓狂な声を出した。
「なに?なに?」
皆なにかを期待してその子の周りに集まる。
「アソコにいる男子~こっち見てない?」
なんだそんな事かあ。
と思いつつ周りにあわせてはしゃいで見る。
ん?ん?
「どこの制服?」
「見た事ないよね?」
「ケッコーかわいい!」
皆のキャイキャイする声が呪文のように聞こえる。
いや、だって。まさか。何で?
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