1.こんな雨の日には

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「久しぶり。」 本当に久しぶりの電話で。 時間がなかったわけじゃないし、したくなかったわけでもないけど。 なんとなくタイミング逃してきたから。もうずっと。 きっと相手も同じなんだろう。 『ほんと、久しぶりだね。』 ああ、ゴンの声だ、って少し目を瞑ってあたたかい気持ちに浸ってみた。 しばらく沈黙が流れたけど、それもどこか心地よく思う。 ゴンも同じだといい。 『雨、降ってるの?』 「ああ、聞こえた?」 『うん。駄目だよ風邪ひくから。窓閉めなよ。』 「ひかないよ。」 知ってるくせに。 普通の人よりも断然丈夫につくられてるこの身体が、風邪なんてひいたことないってことぐらい。 だけど、言われたとおり窓は閉めて。 そしたら雨粒が透明のガラスにあたって、いくつもの線をつくっていく。 なんでか目が離せなくなって、じっとそれを見つめた。 僅かにきこえる雨音に耳を傾けると、時間が止まってるみたいに感じて、 ああ、なんか、オレたちだけみたい。 なんて思ってたらゴンが静かに口を開いた。 『寂しい?』 思ってもみない問いに、少しだけ驚いたから素直に聞き返す。 「なんで。」 『だって、雨、降ってる。』 確かに雨が降っていて、でも今までに雨が降ったことなんて数えきれないほどあって。 言われて、気が付いた。 オレがなんでか電話したくなった理由。 無性に声が聞きたくなった、理由。 ただ、寂しかったんだ。 似ていたから。 別れたあの日の空に。 (言わないよ、会いたい、なんて) 二度と離れられなくなる。 (080829)
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