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「えと……楽しみにして島に来たから、行きたいって気持ちが強いかな」
おばあちゃんに心の中でごめんなさいと謝っておく。今度ゆっくり話す機会を持とうと決意しながら、ぼくは自分の感情を優先することにした。
「そうか。まあ、昴流ちゃんが決めたことや、おばあちゃんは尊重するで」
そう言うおばあちゃんの笑顔は、やっぱりどこか寂しげで申し訳ない気持ちで一杯になる。
「そうときまりゃあいろいろ教えることもあるしな」
「へ?」
机の上の羊羮に伸ばそうとした手を、刀子姉さんに掴まれて引っ張られ、立ち上がらされる。
「あたしがいろいろ説明してやるから、行こうぜ」
「えっ、あっ、まだ羊羮まだ少ししか食べてないのにっ!」
男として情けないことではあるけれど、刀子姉さんの腕力にはぼくじゃあとてもじゃないけれど太刀打ち出来ない。
引っ張られればこらえることも出来ず、なされるがままにどこかへ歩き出した刀子姉さんについていくしかなかった。
「せめて羊羮だけ食べ終わってからに! 刀子姉さんだってもったいないと――って自分の分はきっちり食べてる!?」
刀子姉さんの皿の上に羊羮がない! というか剣子姉さんも、おばあちゃんも食べ終わっているようだった。
そんなに食べるの遅いのかなぁ、ぼく。
「おばあちゃん」
「なんや」
「昴流の分の羊羮、貰ってええかな」
「あかん。私のもんや。私が食べる」
部屋の中からはそんな呑気な会話が聞こえてくる中、ぼくは長い廊下を引きずられていった。
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