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「おし、そんじゃ行こうぜ」
刀子姉さんは満足げに頷くと梯子に足をかけ――って……。
「刀子姉さん、ちょっと待って」
「あん? 何だよ?」
早速登りはじめようとしていた刀子姉さんは、呼び止められると不機嫌そうに振り向いた。
「刀子姉さんが先に昇るの?」
「そりゃそうだろ。お前が先行してどうすんだよ。あれ見てみろよ」
言われて天窓を見上げる。天窓には鉄製の扉が取り付けられている。
「梯子に捕まったままあれ開ける自信あんのか?」
「うう……ないけど、でも……」
刀子姉さんは今、ホットパンツに大きめのサイズのTシャツという姿だ。下から、見上げたりなんかしたら……。
「なに赤くなってんだよ、お前は」
ぼくがなぜ赤くなってるのか、女の子なんだから自分で気付いて欲しいものだった。
「なにをためらってんのか知らねーけど、とにかくさっさと昇るぞ」
そう言って刀子姉さんは梯子の格(こ)に手をかけると、とんとんとんと言った調子で軽快に昇りはじめた。
「あ、待ってよ!」
ぼくも追いかけて梯子を昇りはじめると、先程までの心配が杞憂だったと言うことはすぐにわかった。
昇るスピードが違い過ぎるから刀子姉さんはもう遥か上に居るし、なれない梯子を昇るという作業に上を気にしてる余裕はあまりない。
「おせーぞ昴流!」
「ちょ、ちょっと、待って、て。先に、入ってて、いい、から」
遥か上から落ちてきたぼくを急かす声を聞いて上を見上げると、刀子姉さんはもう天窓のところまで辿り着いていた。
ぼくはと言うとようやく中頃に到達しようかというところだ。振り向くと平屋建ての御影家の屋根とほとんど同じ高さなのがわかる。
それにしても、これは意外と重労働だ……。
「早くしろよー!」
「……」
大きな声を出す余裕はないので、無言で頷いて返事をする。
そろそろ怖いから、あまり下は見ないようにして黙々と梯子を昇っていく。
「やっと、つい、た」
へとへとになりながら天窓にたどり着き、天窓に首を突っ込んで中の様子を確認する。
外から見て天窓だと思っていたけど、屋根裏に付いている窓のようで、すぐそこに床があるのがわかった。
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