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寝耳に水だったのか、おばさんの話を聞いた姉妹が揃って目を丸くする。
「うわ……組分けではっきりした当たり外れが――な、何でもねーよ」
余計な口を開いた刀子姉さんが、鞘子おばさんに睨まれて慌てて口をつぐむ。
剣子姉さんはそんな刀子姉さんに呆れたような視線を送っていた。
どちらか当たりでどちらがはずれなのか……聞きたくもあったが、色んな意味であとが怖いから黙っていた方が良さそうだ。
それにしても、ぼくと姉妹のどちらか……? ふと、組分けについて疑問がわいてくる。
「えと……でも経験的にはぼくと鞘子おばさんの方がバランスが取れるんじゃ」
「コースが違うんよ」
ぼくが口にした疑問に剣子姉さんが答えて、鞘子おばさんが頷いてみせる。
「剣子の言うとおり。いつも私が見回ってるコースはよく問題が起きるコースで」
「うちらが普段見回っとんのは比較的なんも起こらんコースゆうことやな」
なるほど。鞘子おばさんの言う組分けならぼくは案内付きで比較的安全に見回れるし、姉さんたちの片方はおばさんと一緒に普段より一歩踏み込んだ経験が出来ると、一石二鳥なわけだ。
「それで、剣子と刀子には一日交代でコースを変えて貰おうと思ってるのだけど、順番は――」
「なあなあ昴流。昴流はどっちと一緒がいい?」
「へ? ぼく?」
鞘子おばさんの言葉を遮るように刀子姉さんがぼくに質問を投げ掛ける。
見ると、剣子姉さんも興味深そうにぼくの方を見て答えを待っているようだった。
「そ。折角だから昴流が先にどっちと回るのがいいか決めてくれよ」
「え、その、えと……」
急にそんなことを言われても……。
姉妹はにやにやと笑いながらぼくの答えを期待して待っている。助けを求めて鞘子おばさんの方を見ても、姉さんたちと同じように笑いながら黙って肩を竦めるだけだった。
三人の中ではぼくが順番を決めるということで決まったらしい。四対三、多数決の原則は民主主義社会では絶対だ。
三人分の視線がぼくに注がれ、肩が重くなる。
えと、ここは――
「そ、それじゃあ剣子姉さんで」
そう言った途端に、刀子姉さんが肩を落として剣子姉さんがにこりとぼくに笑いかける。
「で、昴流くん。その心は?」
「えと……真面目さ?」
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