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数時間ぶりのしっかりとした地面を踏みしめる。ずっと船に揺られていたからか、なんだか妙な感じだった。
船から降りてまず驚かされたのは、フェリー乗り場の様変わりだった。随分綺麗になっているし、周囲の施設は明らかに真新しい。
旅行客らしき人も多いし、フェリーからは丁度団体さんが降りているところだ。そういえば、リゾート開発がされたと聞いたような気もする。
「うーん……」
まあ島にとっては悪いことばかりではないのだろうけれど……ぼくら――いや、親戚たちにとっては仕事が増えて、面倒だろうな。
そう思いながら、ぼくはフェリー乗り場を後にした。
フェリー乗り場を出るとバス停はすぐに見つかった。バスの時刻表は予め調べてある。次のバスまではまだ十分少々ある筈だ。
ぼーっとしながらそんなことを考えていると、ぼくの目の前をバスが一台通過した。
――って、バス?
「へっ? ちょっ、待っ――」
「……それ、違う。シャトルバス」
バスが目の前を通過したことに焦り、追いかけようとしたところで後ろから声をかけられた。
驚いて振り向くと、いつから居たのだろうか、バス停のベンチには小さな女の子が座っていた。
この島の子……じゃないよね? 女の子の肌は真っ白で、髪も瞳も色素が薄い。どこからどう見ても日本人ではない。
その割には服装は白い生地の浴衣で、下駄を履いていたりするのだけれど。
「えと……ありがとう。助かったよ」
ぼくが礼を言うと、女の子は短く「どういたしまして」と言ってベンチから立ち上がり、ぼくの方に近づいてきた。
「……」
「え、えと……」
じっと、女の子は黙ってぼくの顔を見つめる。その顔があまりに真剣なものだから、ぼくは視線を逸らすことが出来なかった。
しばらくそうしていると、今度は女の子がぼくのまわりをゆっくりとした歩調で歩く。そのまま一周ぼくの周りを回ってから、ぼくの正面に戻ってくるとおもむろに口を開き、彼女はこう言った。
「すごい、別嬪さん」
「……」
ぼくの容姿について……まあ、本人としては褒めたつもりなのだろう。
でも――
「ぼくは男だよ!」
男に対してそれは褒め言葉にはならないよ!
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