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「ご、ごめんなさ――」
「第一、最近は『イケメン』だのなんだのって、男性に対して容姿を褒める言葉が世の中に氾濫してますけどね、そもそも古来日本では容姿を褒めたたえるような言葉はそもそも女性にのみ向けられる言葉であって、男性の容姿を褒めるという文化はなかったんです。男性の魅力っていうのは、もっと内面的なものだと考えられていたんですね。ですから、別嬪とか可愛いっていうそもそも女性の容姿、女性的なもののあり方を褒める言葉だけでなくて、綺麗、美しい、なんていう万物に向けられるものも男性に対して使用するのは誤用で――寒っ!?」
突然、夏だと言うのに冷たい一陣の風が吹きぬけた。おかげでヒートアップしていた頭が冷えたけれど……今のは?
……気のせい、だったのだろうか? ここは屋根とベンチがあるだけでエアコン付きの待ち合い所だなんて気の利いたものではない。屋根で強い日差しこそ遮られているけれど、湿気を帯びた空気はむせる程に暑い。
風が吹いたとしても、ぬるいとしか感じないだろう。とてもじゃないが寒いだなんてそんな風には――
「あ、あれ?」
よく見れば、先程の女の子もいつの間にか居なくなっていた。……まあ、暴走していきなり説教を始めたりすれば立ち去りもするか。
怖がらせちゃったかな、と反省しながらベンチに座ると、
「ひやっ!?」
座ってみるとベンチはやたらと冷たくて驚いて立ち上がってしまう。腰を上げて手で触ると今度は勘違いなどではない。確かにかなり冷たい。
ちょっと前まで、誰かが何か冷たい物でも置いてたのかもしれない。アイスクリームが溶けないようにドライアイスを入れたスーパーの袋とか。
位置を変えて座りなおそうとしたところで、バスがやってきてプシュウとエアブレーキの音をたてながら止まったので、ぼくはそれに乗り込んだ。
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