七夕挿話

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ふと今まで腰を下ろしていた石のたもとを見ると、瓢箪が一つ転がっていた。 不思議に思い拾い上げ振ってみると中には七色に輝く水が入っていた。 彦星は必死に耐えた。 今この水をいとくちでも口にすれば織り姫とは永遠に会えない。 しかし彦星は喉の乾きを耐えることはできなかった。 水一口くらいならば神様は見逃してくれるかもしれない。 そんな気持ちが、彦星に瓢箪を口へ運ばせた。 とてもおいしい水であった。 たった一口を口に含ませただけなのに、十分なほど身体が潤うのを感じた。 すると東の空から太陽の光が伸び出し、三日間のお役目の終わりを告げた。 やがて神と共に織り姫が現れた。 神は彦星にこう告げた。 「三日間の番役、誠にご苦労であった。  礼を言うぞ。  ただしそなたは私との約束を守らなかった。  飲まず食わずの番であったはず。  しかしそなたは己に負け水を口にした。  よってそなた達を認めることはできぬ。」 そう神が言い終わらぬうちに、彦星と織り姫は引き離され二人の間には大きな川が流れ始めた。 川は大きすぎて橋は架けられず、流れも速くて泳いで渡ることはできない。 織り姫と彦星は対岸の淵で豆粒ほどの互いの姿を見つめることしかできなかった。 涙枯れ果てた織り姫は泣くこともできず、ただただ対岸を見つめていた。 己の欲に勝てなかった彦星はその場に立ちつくし対岸を見つめていた。 二人は互いの姿が見えずともその場を立ち去ろうとはしなかった。 時は数え切れぬほど過ぎていったが、いつしか再び会えると信じて疑わなかった。 そんな二人の互いを信じる姿に、再び神の恩赦が下され、年に一度だけ大河の真ん中で会うことを許された。 その日がやってくるとどこからともなくカササギの群がやってきて橋をつくり、二人はカササギの群のなす橋の上で年に一度「七月七日」の日に会ったのだという。 人々はその後七月七日を「七夕」と称して二人の出会いを祝福するようになった。 これが七夕の由来である。
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