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家臣は口々に『生まれたお子を、月下美人の怒りを鎮める為の生け贄として差し出す他ない』等と言いだした。
王妃は家臣達を睨み付け、医師から赤ん坊を取り返し、きつく抱き締める。
「嫌です!それだけは!この子が生まれて背負ったものは、この子の責任ではないはずです!!」
国王は、悩んでいた。
家臣達が言う事も、解らなくはない。
王として災いから国を守る為には、呪いを持ち生まれた我が子を生け贄として捧げる事が一番なのかもしれない。
だが我が子の姿を見る度に、国王としての冷静な判断は出来なくなっていく。
国王である前に父親。
例え呪われていようとも、可愛い我が子にはかわりない。
月下美人の怒りを鎮める為だけにそんな我が子を生け贄として差し出すなど、とても出来そうになかった。
「お前達、少しはずしてくれ。王妃と二人で話がしたいのだ」
家臣達は何か言いたそうに国王を見ながら去って行く。
そして国王は我が子に近付き、大きな手で頭を撫でた。
「まだこんなに小さい。それにこんなに可愛い。なのにお前が背負ったものは誰より重い……」
何故この子なんだと思うと悔しくて涙が溢れてくる。
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