9人が本棚に入れています
本棚に追加
そこは薄暗い場所だった。
友が、仲間がいたからこそしのぐことも出来た。
彼らが、倒れていくのを見るのは…辛かった。
「いいかゼノス、お前は生きろよ」
「阿呆!そんな事を言う暇があったら、痛みに意識を集中しろ!目を閉じても殺す!」
「ハハ、もう痛みなんか、とうの昔に感じてねぇよ…苦しいだけなんだ、腹の辺りが…熱いような、なんつーか…」
「俺が知るか!俺はお前を生かす、そう決めたんだ生きろ!」
「無茶苦茶言いやがって」
ゴホッと咳をした青年の口から、腹から溢れている水と同じ色の液体が吐き出された。
目も覚めるような赤だ。
彼の水晶色の長い髪が、紅に染まっていく。
ゼノレウスは彼の腹を手で押さえ、癒しの奇跡を使いながら彼よりも苦しげに眉を寄せた。
「ゼノス…そんな顔すんなよ。今度さ、俺、ガキが生まれんの。レシィと俺の子だぜ?絶対可愛いと思うんだ」
「んなワケあるか、お前に似て性格最悪に育つに決まってる」
「いいんだよ顔が可愛けりゃ。性格なんて二の次だ」
「ホント最悪だお前は」
飛び交う軽口にも勢いはない。
それでも、彼は軽く笑った。
「…魔王が泣くんじゃねぇよ。俺達の最強が、そんな情けない面見せんじゃねぇ」
「うるさいお前が死ぬのが悪いんだ」
「レシィとガキのこと、…頼むわ」
「嫌だぞ。まだ嫁もいない俺が何で後家さんの面倒見なきゃならんのだ」
「拒否権なし。あ。女ならシルヴィア、男ならシグルドな」
「忘れるからな。俺は絶対忘れるからお前が戻ってつけろ」
「悪い…、…レシィ…に………ごめん、て………」
それが、彼の最後の言葉になった。
最初のコメントを投稿しよう!