10人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、返事は」
「あんさ」
「何です」
「一つ良いか?」
「だから、何なんです」
彼岸に任せると余計に傷が増えそうだから、途中で寝かせて、自分で薬を塗りながら精蘭と話を続ける。
答えを早く出せと言いたげに、苛々した口調で返して来るが、お前は大事な事を忘れてるんだよ。
「依頼の内容ぐらい話しやがれっ!」
「私、話しませんでしたっけ?」
ったく、勘弁してくれよ。子猫みたいな、何が違うの、的な顔すんなよ。
多分、精蘭も俺と同じくらいだが、見様によっては二十前半か十代後半に見えるんだから詐欺だぜ、コレ。
外は女顔の笑顔が似合う男で、中身は鬼畜で変態。救い様がないだろ。
「……今は何もしますまい。彼岸が起きる」
呪詛の如く呟くが、聞こえない振りをする。
ちなみに、今は夜中の二時になろうとしている。こいつらが来てから飯を食ったり、シャワーを浴びたり、地獄に招待されたりと色々していたからだ。
もはやお眠な彼岸は俺が何時も寝ている長椅子で寝かせている。
こんな時間に連れて来るなと言いたいが、自分の部屋に一人置いて来る訳にはいかないんだろうな。何せ独身の一人暮らし……つか、彼岸と同棲してる訳だから。
「そんで。今回はどんなよ? 蛇女みたいなツマラン仕事はパスな」
因みに、その時の報酬は無しだった……マンションの部屋の中で三十人近い敵を全て血祭りに上げたから、部屋の修理諸々の請求書が億近い単位で来やがった。
それなりに遊んで暮せるが、そこ迄は貯めてはいないので、精蘭が全て肩代りして、施しで夕飯を食わして貰っただけだ。
チィ、思い出すだけでも腹が立つ。
「取り敢えず、これを」
机の上に置かれたファイルを手に取る。パソから落した資料だな。
最初のコメントを投稿しよう!