黒い封筒

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   「ねぇ~、新しい都市伝説の話聞いた~?」  「あ゙?」  長椅子で気持ち良く寝ていたのに、いきなり訳の解らない理由で起された俺は昔とった何とやらで相手にガンたれてやった。  とはいえ、相手も慣れてる事だから気にもしねぇで話を続けてやがる。  聞く気はないので右から左に流してるけどな。  おっと、自己紹介が遅れたな。  俺は神無焔矢(カミナシエンヤ)。言っとくが、偽名だ。こんな名前が役所に通るかってんだ。ま、何でも有りな昨今は通るかも知れんが。  歳? そりゃ言えねーな。お嬢ちゃん。あ? もしかして、ヤローかよ。したらソッコーイカせる。漢字は『逝かせる』で4649。  ついでに、人が気持ち良く寝てたのにくだらない事口走りながら腹に乗ってるコイツは、彼岸(ヒガン)と言う。ガキ独特の舌っ足らずではあるが、意外に自分の意見を言う珍しい奴だ。  「きーてる~?」  「やかーし。十二時間後に聞いてやる」  只今正午ピッタリ。俺の活動時間は夜中からじゃ!今が俺の体内時計で夜中なんじゃ!!  「うぅ~、エンのドケチ~!」  「っざけんなガキ! 金にならん事に力使わせんな!」  不機嫌さMAXで怒鳴ったら泣きやがった……  シカト決込んで寝ようとしたんだが、うるせぇわ怒鳴ってせいで血圧上るわで寝られなかった……  ちくしょう…これだからガキは扱い難い…  「うるせぇつってんだよ! 話聞いてやるから珈琲淹れろ。ブラックだっ。砂糖とミルク混ぜたらブッ殺す。とっとと動けっ」  寝起きの俺様超ド級の不機嫌。つか、あいつも知ってて起すんだから質が悪ぃ。  珈琲が出来る前にシャワーを浴びようと風呂場に入り、熱湯ギリギリのお湯と冷水を交互に三回浴びてようやく身体が起きた。  まだ三時間くらいしか寝てないんだがな。  悲しいかな、歳には勝てない。眼の下には隈が居座ってやがる。クソッ、男前の顔が台無しだぜ。  腰にタオルを巻付けただけの状態で部屋に戻ると、珈琲の心地良い香りが俺を迎えた。  「下着くらいはいてよ~」  「うるせぇ。俺が自分トコでどんな格好しようが構わねぇだろが」  「人が居るし~」  「お前ね、俺を怒らせる気」  ニッ…コリと微笑んだら固りやがった。  
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