黒い封筒

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   なんつーの? ほら、あれだよ、アレ。蛇に睨まれた蛙、だっけか? そんな感じ。   食っても美味くなさそー。バボーンなおねーちゃんなら別だけど。食うの意味が違う? そう言う突っ込みは野暮だから。  「ほぉ。ならば、私は何なんですかね?」  背筋がゾワリとざわめいた。てっきり彼岸が一人で遊びに来て居たと思ったのだが。  「エンがイジメる~」  彼岸が抱き着き再び泣き出す。その瞬間、そいつの背後に黒い炎が見えた……気がする。  この時程、彼岸が悪魔に見えた事がない。  その後は……言いたくもない。阿鼻叫喚の地獄を勝手に想像してくれ。俺は本気で叫んでいたと伝える。  で、筋肉なんて言葉とは無縁の華奢な身体のどこにあんな力を隠してやがるんだか。未だ勝てた試しがないこいつの名は、黒称精蘭(コクショウセイラン)。彼岸を溺愛している。ロリコン、ドSのド変態。  まぁ、見た目だけで言やぁ、お綺麗な奴なのよ。黒曜石を嵌め込んだかのような切れ長の黒い眼に、腰まである艶のある黒髪。それとは対照的に白い肌。男のシルエットなんだが、男臭さを感じない。ミーハー女に騒がれそうなタイプと言えば解りやすいか。  ただ、何でか知らんが、こいつは洋服を着ようとしない。大抵は着物。しかも着流し姿。この趣味だけはよく解らん。  とにかく色んな意味で趣味が合わないと思える奴で、ぶっちゃけると近寄りたくない存在。  けど、俺の仕事はこいつが斡旋してるのでそれは無理。  「で、彼岸から聞いたのですよね?」  温かみを感じられない笑顔で静かに問い掛けられる。今度は俺が蛙になる番だ。渇きで引きつる喉に珈琲を流し込む。  「セイ~。エンは起きたばっかでお風呂してたの~。だからまだ話してない~」  彼岸、ナイス。そう言ってくれりゃ天使になるんだがな。  「ふむ。早過ぎましたか」  「新しい都市伝説が出来たとか言ってたよな?」  「えぇ、君の出番になりますよ」  面倒臭いと言いたいのだが、こいつを怒らせるのは死に直結するので黙っている事にした。金銭的な面でもだが、文字通りに取ってくれて構わん。戦闘能力でも精蘭の方が上なのは認めてる。  「黒い封筒……」  ポツリと囁くように話出す。こいつの話はいつも歌を歌うかのように滑らかで、自然に俺の中に入り込む。  
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