黒い封筒

4/10
前へ
/57ページ
次へ
   話は簡単だ。良くある呪いの手紙と同じ様なモン。いや、DMになるか。  ある時DM風の黒い封筒が届く。大抵は見ないで捨てるが、中には興味を持って開ける奴も居る。ま、それくらいは誰でもやるか。見るのはタダだ。  と、中から出て来るのも黒いカード。サイズは名刺より一回りデカいくらい。  『闇の欲望叶えます。対価は応相談。[Qliphoth]』  うっさん臭。多分、[Qliphoth]てのが店名なんだろうがちょい引っ掛かる名前だな。  まぁ、大概はここで笑飛ばすか、警戒して捨てるかで終わるだろうが、窮地に立っている人間はそういかない。  書かれている電話に連絡したり、カードにある住所を探して直談判したりと阿呆をやる訳だ。溺れる者は藁をも掴むと言うが、意味がないと俺は感じる。そんな不確かな助けよりは、もっとしっかりした助けが欲しいさ。  っと、脱線したな。カードにある『欲望を叶える』つーのが、どこまで適応されてるか解らないが、近頃アンダーグラウンドの動きが騒がしいとか。  補足だが、この場合のアングラは俺達の仕事繋がり、て意味。一般世界のソレとはちょい意味が異なる。こんな仕事だから表にあまり出ないんでそう言ってるだけの事。  とにかく、騒ぎがこれ以上大きくならない内に調査をするんだが…ちっくら待て。  「なんで俺?」  「何がです?」  「いちおー、クラッシャーなんスが」  俺の役割はクラッシャー。破壊メイン。調査とかのチマチマした仕事は他に担当が居る。この俺が調査なんぞの細かい仕事に向いてる訳ねぇ。  「壊して構いません。むしろ壊滅させて下さい」  夏の日差しのような爽やかさ全開の笑顔であっさり怖い事言うたどこのシト。この笑顔に逆らったり意見したら、やっぱり命が危いので何も言わなかった。   ヤダやだ。これだから笑顔の変態は嫌いなんだよ。  「何か言いましたか?」  口の片端を更に上げてにこやかに聞いてるが、これはヤバい傾向だ。下手な事言うと再び地獄を見るハメに陥る。これから仕事に行くのにそんな事になったら自殺行為と同じだ。  「何も言ってねぇよ。じゃ、行くぞ」  カードを手に急いでその場から出て行く背に、精蘭の言葉が投げられたが、あまり聞こえなかった。    「……様に……しますね」    多分最後は『お願いします』だとは思うが、何の様にだ? まぁ、気にするまい。大した事じゃないだろう。  
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加