黒い封筒

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   先手必勝と、オレが戦闘体勢をとる前に蛇女の尻尾が突出される。  だが、遅い。オレには簡単に見切れる。踏み越えてきた屍と戦闘経歴が天地程違うんだからな。  軽いバックステップで躱し、すぐさま間合を詰めて正面に立ち、細い首を片手で掴む。  「精蘭を知ってるんなら、オレが誰かも解るよな」  笑顔を作ってやるが、オレの瞳は笑わない。目の前にいるのは獲物。殺して良い物だ。  蛇女が何か言おうとしていたが、オレは聞く耳持たない。  「アディオス」  それだけ告げて女の首を捩り切った。  それが床に落ちると同時に鮮血が噴き出しオレの身体に降り注ぐ。  フン……下衆でも温いのか。不味いけどな。  オレの手に纏りつく紅き命の源。血液。ペロリと腕を舐めたが、匂いばかりが強くて味がない。  暫く痙攣していたが、もはやこんなモンはゴミだ。目の前の硝子に向かって投げ付ける。  「オ、オーナー!」  そう言えば、従業員が居たんだっけ。今の硝子が割れる音で出て来たんだな。  この虐殺の痕を見て、逃げるかと思いきや、やはり全員人間じゃなかった。人の姿をしたままで、顔が蛇に変って居る。  眷属か。ツマらんな。そこで逃げりゃ今暫く生きる事も出来ただろうし、オレも愉しめるのによ。  そんな事を考えつつ、立ち向かってくる眷属達の相手を素手でこなす。雑魚相手に武器を使う必要はない。後の手入れを考えりゃ素手で充分だ。  何処にいたのか、三十人近い眷属達を素手で血祭りに上げ、終わった時には部屋で動いているのは血で紅く染まったオレだけで、あとは血の海に沈んだ『元』生物の残骸。  首を飛ばしたり、四肢を引き裂いたり、胸に大穴空けてやったりした、グロテスクな死骸だけ。    ったく。弱いのばっか集めやがってよ。此処がオレ達トップハンターの縄張りって知らなかったのかね。    残党が居ないか調べつつ、従業員ロッカーから適当なサイズの服を漁り、シャワーがあったんで血を流してからオレはそこを後にした。     ま、後の処理はオレの仕事に含まれん。壊滅させろと言ったのは精蘭なんだしな。だが、出かけ際に何か言ってた気がするが………まぁ良いか。    ビルの外に出たオレは、愛用の銘柄『Rothmans ROYALS』に火を着け、そんな事を思いながら空に向かって行く紫煙を眺めていた。  
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