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現実から逃避するようにコホンと咳をすると、祥姫は一枚の書類を琅青の元へ差し出した。
「…これは…」
「そなたが気にしていた、あの小僧どもの調査じゃ…妾が調べてみたところ面白いことがわかった。
どうやら10の皇子と6の皇子が合流したようだ 」
「では…他の四人の皇子様方の行方は?」
「3は疫病に侵され、北の筥都で幽閉がてら闘病中
8は放蕩三昧のすえ借金苦で夜逃げ中
12は幽閉された城の周辺の村の娘と恋仲になり、元徳妃の母親の反対を押し切り結婚…今では医者を目指して猛勉強中
5の行方は以前として不明だの」
淡々と告げる祥姫に琅青は盛大なため息をこぼす
「…数字ではなく名前でおっしゃって下さい。」
「延冬殿の息子と娘は多過ぎるゆえ…覚えるのが大変でのう…覚えてるのはそうさの、半漁人の小僧と5と6ぐらいか…ああ、姫その3も中々濃い娘だったから覚えてるぞえ?」
「…もう良いです…」
再びため息をこぼすと琅青はその書類に目を落とす
「しかし忌まわしい残骸同士が合流して何をなそうと言うのか…」
「夫人、申し訳ありませんがこの地域の酒屋と菜館…そして妓楼の人の流れを調査して下さい。
また、芽繕につたえ新しい間諜の用意もお願いします。」
「間諜…?すでに出しておるが?」
怪訝そうな祥姫に琅青はスッとその鋭い眼光をむけた
「既に殺されている可能性があります…
どうやら…まだ火の粉が燻っていたようです」
祥姫は一瞬目を見開き、直ぐに目を細めると扇で口許を隠す。
「…解せぬな 」
「…?」
「6と元尚書達の動きが“わかりすぎる”のもあるが、妾も芽繕も内部に間諜を放っていないあくまで村人や町人に紛れさせて外からの情報収集だ
…なのに何故、おぬしは“間諜が殺されている”とわかるのだ?」
「……。」
その言葉をうけ、琅青は目を閉じると、真っ直ぐな視線を受け無表情のまま、祥姫をみた
その表情はそれ以上の質問するなと言わんばかりだ
祥姫は諦めたかのように扇を畳むと、踵を返し歩きはじめる
祥姫は扉の前でピタリと足をとめると、振り向かないまま琅青に声をかけた
「余計な詮索はここまでのようだの…まあいずれわかるだろうがな…今は聞かないでやる。」
「ありがとうございます」
「ふんっ」
鼻を鳴らしでていった祥姫の背を見送ると、その視線は再び書類へと向けられた。
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