『最強』から『最弱』に

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  俺は目を覚ました。 目に見えるのは、白い壁に白い天井。 POWの医療室だ。       「俺………。」     あれからどうなったのかを整理するため、思い出そうとする。 そんなときに横から声が聞こえた。    「急に倒れたんだよ。」     「ハワードか。」     首を横に動かし、ハワードを視界に入れて呟いた。 「俺じゃあ不服か?」     ハワードはニヤッと笑いながら俺に問いかける。 俺はハワードに答えず、さっきの声はハワードのものだろう、と考えた。 もし、ハワードがあのとき俺を呼んでくれなかったら俺はどうなっていたのだろうか。     「何だよ黙って。まぁ、でも意識が戻ってよかった。念のため今日は休んどけ。」     ハワードは俺を安心させるためか、優しく笑った。 「あぁ。そうしとくよ。」     俺もハワードにつられるように笑った。 「それよりどうしたんだ?いきなり倒れて。さっきもうなされてたぞ。」     「知らねぇよ。ただ……。」     俺は言葉に詰まった。 この先の言葉を、ハワードに伝えていいのか迷ったからだ。     「ただ?」     ハワードが俺を見る。 その目は興味本位で聞こうとしている目ではなく、本気で心配している目だった。   だから俺は言った。     「あの数の魔物を殺したっていう実感が沸いたんだ。」     血が怖い、なんて死んでも言えない。言える訳がない。 「……そうか。俺は仕事があるから戻るからな。」     「あぁ。わざわざありがとう。」       ハワードが出ていこうとした瞬間――――。     「痛っ!」   「どうした?」   「ちょっと、紙で指を切ってしまったみたいで……。」   「見せてみろ。あー。血が出てるな。絆創膏でも貼っておけ。」 「はい。」       なんの変哲のない普通の会話。 だけど、俺にはその会話は普通には聞こえなかった。
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