ねぇ、せんせ

名前

私は彼のことをずっと「せんせ」と呼んでいる。

担任教師だった頃、彼は私のことを他の生徒と同じように「高野さん」と苗字で呼んだ。

しかし、二人で会うようになってから、彼は私の名前を呼ばなくなった。

彼はいつも私のことを「君」と呼ぶ。

二人で会い、抱き合うのに、さん付けで呼ぶのはよそよそしい気がしたのかもしれない。

けれど、彼は決して下の名前で呼ぼうとはしなかった。