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「……おい、お前」
「偶然手に入れただけよ、無駄にするのも勿体ないでしょ」
そう言って首を横に振る水無を見て、柳は軽く眉を潜めた。
中学三年の頃に上映された二部作目を、俺は水無ともう一人と共に見ていた。
七原春木、中学時代のクラスのお調子者代表。
「上映時間まで後20分よ、行きましょ」
勝手にバイクに乗り込んでヘルメットを被る水無を見て零は軽く頷きバイクに乗り込んだ。
曰く、俺の目付きは常に何処かを睨んでいるようだ。
曰く、その目付きが怖いのは森羅万象による理に等しい。
様々な曰くを突き付けて来た俺の中学時代の友人、常にのほほんとした顔をしていた春木は何時もクラスの中心だった。
平日だが普通より多目の客が映画館中にいた、その中で良くも悪くもないまあまあな席に座り途中の売店で買ったコーラを飲んだ。
吹き替えはされているようで字幕を目で追う作業をしなくて幸いだ、そしてその分の余裕を柳は物思いにふける事にした。
「なあ、俺水無の事が好きなんだ」
中学三年の頃の一学期後半、やや夕暮れ気味の教室で春木はそう切り出してきた。
「だから?」
素っ気なく返事をするのは何時もの事だが、何故か春木は慌てたように両手を振った。
「え?えぇ!?なになにその反応!?」
「……何が」
「お前等付き合ってたんじゃないの!?」
「お前の気のせいだ、偶々一緒にいる機会が多いだけだろ」
「な~んだそうなんかよ~……慌てて損したぜぃ」
春木は大袈裟にため息をついて机に座り込んだ。
「それだけなのか?なら帰りたいんだが」
「あ、ちょっと待った待った待った、付き合ってないんだったら俺に協力してくれよ!!」
春木はそう言うとカバンを漁り、映画チケットを二枚取り出した。
「なら今度映画に誘うんだ、左腕の白蛇第二部作!!見てないようだからデート序でにあの面白さをアピールする俺の一石二鳥作戦!!」
「……一部作目を見てないのにいきなり二部作目に誘うつもりか?」
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