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突然の衝撃と破裂音、視界……いや世界の全てが崩壊を迎えたかのように崩壊し暗くなり、その世界がようやく色を取り戻した時身体中に激痛が走った。
見村直子は一瞬何が起きたか分からなかった、ただ分かったのは腹部から流れ出る暖かい液体と足の骨にヒビが入ったかのような痛み。
次の瞬間意識が覚醒した、フラッシュバックのように何がおこったのか矢継ぎ早に頭の中に情報として流れる。
コンビニに行きその帰りに行きなり対向車線にはみ出して来た車と激突したんだ。
事故にあったのは初めてだが思いの外自分は冷静だった、痛みのせいかもしれないがとにかく……冷静だった。
(救急車……)
携帯の入っているバッグを探した、自分は怪我をしていて恐らく向こうも大なり小なり何等かの怪我をしてしまった筈。
直子は自分が冷静だと思っていたが、回りが見えていなかった。
こんな大通りで事故になれば誰かが救急車を呼ぶ筈、しかし今直子の見ている世界は車の中と目の前の事故車だけだった。
向こうの車の中が見え、直子は思わず生唾を飲み込みそうになった。
どんな衝撃があったのか男の人の後頭部が此方を向き顔が完全に後ろを向いていた。
オブジェのように180度回った首、吐き気を催すには充分すぎる衝撃とグロさだ。
だが今は嘔吐している場合ではない、携帯を見つけ救急車を呼んで病院に運ばれて……。
思考が途切れた、あり得ない物を見たショックで口をあんぐりと開けたまま直子は固まった。
ギギ…とゆう音がヤケに周囲に響く、雑巾のように捻れた首が少しずつ動いていた。
まるで単調で精巧な機械のようにその首は加速も減速もせずに前を向こうとゆっくり回転している。
ただ、首が捻れる音が徐々に世界を浸食するように大きくなってゆく。
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