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ギギ…
ギギギギ…
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギギギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギキギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
捻れる音しか響かない、怒号も安否を求める声も聞こえない。
自分の声も出ない、手も動かない、首が動かない、感情も働かない、ただ目が確実に映しとる目の前の情報を脳に伝え耳はその酷く耳障りな音をせっせと聞き取っていた。
そして遂に首が此方を見た、まるでポッカリとし開いた虚ろな、そして何処までも繋がっているような黒眼と目があい………
時間は今に戻る、先程その否現実的回る首を凝視した目は今、目の前の大柄な少年を映していた。
柳零は目の前の女性と対になるように立っていた。
女性は傷だらけだ、服の腹部を中心に血に染まりおびただしい量を流した事を示している。
零は女性の安否を確認するでもなく、何がおこったのか聞く訳でもなくただその異様さに立ち尽くしていた。
『あの人……なんか変だよぉ』
近藤あやめも同感だったようだ、そしてその異様さは身体的に異常なのと同時に、明らかに人間として逸脱した気配に目を細めた。
「あやめ……逃げた方が良いよな」
本能レベルにそう告げている。
『そうしよぉ、なんか気味悪いし』
振り向き様に一気に逃げるべきか、それとも少しずつ後退するべきか……。
その刹那女性は顔を此方に向け、その危うい黒の瞳と目があった。
その瞬間零の、人とは逸脱した物を見る瞳はある物を映した。
体の中から溢れる、黒より更に黒い……まるで夜の闇のような霧が体から凄い勢いで溢れだした。
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