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これが最初に感じた気味の悪さだったのかもしれない。
過去に経験の無い異常な状況に身体中の産毛一本残さず全ての鳥肌が立った。
立ち尽くす零の目の前でその黒い靄のような物は口から、目から、耳から、鼻から、身体中の穴とゆう穴全てから溢れ続けた。
そして遂に全てが出きったのか、黒い靄は女性の体から抜けきりその刹那女性は糸の切れた操り人形のようにベチャ、とゆう生々しい音を発して倒れた。
黒い靄はしばらくその場を漂っていたかと思ったらいきなり零に向けてまるで突風に煽られた煙のように凄い勢いで零に接近して来る。
『あ、わわわ!!』
「あやめ!!中に入れ!!」
この黒い靄の狙いはあやめか俺かは分からないが今はあやめを憑りつかせておいた方が二人にとっては安全だ。
肉体とゆう器は幽霊一人で満杯になる事はかなり前から知っている。
このまま諦めて何処かに行ってくれ、零はそう強く念じた。
向こうも入りあぐねているのか周囲を漂うばかりだった…だったが。
「こんな所にいたの?零の字」
その声と同時に黒い靄はまるで流れるように零の間を抜けて後ろの声のする方に向かって行く。
「……水無!!逃げ…ろ」
途中で言葉が途切れた、黒い靄は水無の口から、耳から中に入ってゆき徐々に無くなってゆき……。
「……?さっきからどうしたの零の字」
いぶかしげな表情をして水無は眉を微かに寄せた。
「え…あ、いや」
声をかけられハッとした表情を見て水無は口をへの字に曲げる。
「しまりの無い顔して……うたた寝でもして寝惚けた?アンタも高2なんだから確りしな」
腰に手を当てながら此方に歩み寄ってくる。
仕草も口調も間違いなく水無だが……しかし、何かがおかしい。
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