僕の『ひなた』

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「…青山先生」 そっと保健室のドアを開け、声をかける。 「はい?……ああ、いらっしゃい」 優しい声。綺麗な笑顔。 その身に纏った白衣は、さながらあなたの心のように清らかで。 「今、忙しいですか?」 「いや、平気。…保健医なんて、あんまり忙しくない方がいいでしょ」 「まぁ、確かに…」 後ろ手にドアを閉めると、あなたは立ち上がってこちらに歩み寄ってくる。 「そっちこそ、今日は委員会の仕事無いの?」 「今日は、当番じゃないので…」 「当番じゃ無くても入り浸ってるじゃない」 「別にそんなこと…」 歩み寄ったあなたは、さも当たり前のことのようにドアの鍵をかけた。 「…いいの?鍵なんかかけて」 「いいんだよ……あー、もう我慢できない」 言い終わるや否や、あなたは僕を抱きしめる。 強く、強く。 「ずっとこうしたかった」 「…僕も、です」 あなたの鼓動、あなたの香り、あなたの体温。伝わってくる感覚全てが愛おしい。 「キスしていい?」 「…ダメ、カーテン開いてる」 「誰も見てない。みんな部活してるよ」 「怪我した運動部員が来たらどうするんですか」 「ほっとく」 「うわ、最悪」 「何とでも…」 クスッと笑うと、あなたは僕の顎にそっと手を添えて…… あなたの言葉が、仕種が、表情が……あなたという存在全てが。 僕を暖かく包んでくれる。 心地よくて、安らぎをくれる。 あなたは僕の心にさした、優しい光。 「好きだよ、どうしようもないくらい」 「…僕も好きです、ひなたさん」 あなたの名前は、ひなた。
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