漆黒に響き渡る声

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「……」 ぼんやり月を眺める。 これは私が寝る前に必ずする儀式。 何も考えずにただただ眺め、そして眠りにつく。 再び意識を戻せば、普段と何ひとつ変わらない朝を迎え、業務的な作業の一環ような日中を過ごし、夜を迎えて月を眺め意識を手放す。 そんなループの輪のような、抜けたくても抜け出せれない毎日を過ごしていた。 そんな私の月眺めの儀式の仕方は凄く簡単で仕方はこう。 寝る支度を済ませ、まずは部屋の明かりを消し真っ暗にする。 次にベッドに潜りそして月を眺める。 これでおしまい。 例え天候が悪くて、月が見えなくとも同じこと。 月の光を求めるように、漆黒の闇を眺め続けているだけ……。 でも、どうしても月を眺めないと寝付くことができなくて、昔から毎日欠かさず同じことをしていた。 だから自分の中では習慣化していて、勝手にこの月眺めを『儀式』と名付けた。 いつ頃からやってたのかは全く覚えてない。 お母さんやお父さんも聞いてはみたものの、気付けばやってたみたいで、“まだやってるの!?変な子ね”といらない一言も一緒に添えられた。 でも私も、こんな儀式をしなければ寝られない自分を変だと感じてはいた。 だから儀式については、家族であるお母さんとお父さん以外には、誰にも口外してこなかった。 幼稚園から付き合いのある、幼なじみの千春にすら打ち明けられずにいるから他の友達なんて、もってのほかだ。 私が儀式を口外しない理由は、単に変人扱いされたくないというだけ。 こいつは変人だという、最悪なレッテルを貼られ、青春まっただ中の高校生活を汚したくはない。 そんなことを言う私は、今高校二年生。 生活は至って普通だと宣言したい乙女だ。 だから儀式は私の秘めごと。 そう私だけの……。 私のためだけの儀式(子守唄)。 .
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