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今日も変わらず暗い部屋でベッドに身を沈め、窓の外の月を眺めていた。
――リーン、リーン……。
外から鈴虫の鳴き声が聞こえ、少し情緒的な雰囲気。
私は秋の、この情緒的な雰囲気の中の月が一番好き。
冬のピンと張った空気の中の月も、淀みが全くなくて綺麗だけど。
この鈴虫のメロディーと共に見る月が、一番美しく感じられる。
だから秋という季節が一番好きだ。
――まぁ美味しいものが沢山食べられることも少しは関係してたりもする。
秋の月は好き……だけど。
なんか今日は様子がおかしい。
毎日、月を見ていて少しの変化でさえも見分けることができるようになったからこそ、言えることだけど……。
今日は満月でもないのに月が真ん丸で……。
間近にあるかのように、月明かりは強く眩しい。
『まったく……眩しすぎて眺めるのも億劫になりそう』
あまりに強い光で目が痛くなり、一瞬光から逃れるように目を細めようとすると、
「――セ、……レネ」
そう微かに声が聞こえた。
『……っ!?』
ビックリして体を起こし、すぐさま辺りを見渡すが、普段の自室と何等変わりはない。
『こんな変な宗教とでも、間違えられそうな儀式を毎日してて、遂に耳でもおかしくなった?』
そう自分を嘲笑う。
『でも気にすることはないよね……』
そうよっ!
どうせ外で誰かが呟いた単語が聞こえただけよ。
自分をそう言い聞かせ、また月を眺め始める。
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