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雪がしんしんと降り続いているこの真っ白な世界が何処なのかわからないから、人を探しに動こうにも、どの方向に向かえば人に会えるのかわからない。
だからと言って、このままここに突っ立ってても、確実に凍え死んでしまう……。
絶望感と寒さで身体が震えた。
ううん、駄目よ。
こういう時こそ冷静にならなきゃ……!
何かしらここに来た経過があったはずだもの。
まずは寝た時の記憶を思い出さなきゃ。
私は普段、全くと言っていいほど使ってない頭をフルに動かし、記憶を辿った。
確かいつも通り、寝るために“儀式”をしてた。
でも月はいつもと様子が違って……。
満月でもないのに真ん丸で、いつもより大きくて、あまりにも光が眩しかったから目を細めて……。
そこでやっと思い出した。
『そ、そうよ!“せれね”とか、何か訳のわからない変な声が聞こえてきて……。逃がしはしないって……』
「――逃がしはしない……」
あの声がまた聞こえたような気がした。
『じゃあ私は捕まったってこと?』
辺りは真っ白な雪しかない世界に……?
『でも捕まえたんなら、なんで私をこんな雪の上に置き去りにしてるのよ!』
普通、連れてきたら檻とかに閉じ込めたりするんじゃないの!?
わざわざ置き去りにする理由が、私にはわからなかった。
ふと自分の格好を確認すると、寝た時のパジャマ姿のままだった。
かろうじて雪で濡れてはなかった。
不幸中の幸いとでも言うべきか?
『でも、どういうことかしら?』
そう呟き、足元を見る。
『私、靴履いてるのよね……』
それも素足に靴!
気持ち悪いったらありゃしない。
『まぁでも……。ないよりかはあったほうがいいって考えた方がいいのかな?』
何しろここは外。
しかも雪まで降ってくれちゃったりしている。
このまま何もしない、ってわけにもいかないから動くしかない。
それなのに裸足なんかじゃ無理だもの、絶対に。
靴を履かしてくれたことだけは一応、感謝はしとくわ。
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