白い世界

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『さてと動かなきゃね……』 視線を足元が戻し、ポツリと呟いた。 ずっと突っ立ったままでは確実に凍死してしまうし、今、天気が穏やかだからといって、いつ荒れるとも限らない。 その内お腹も空くだろうし。 再度、場所を確認するために辺りを見渡してみるが、やはり誰かがいるわけでもなく、ただ木々が至る所に突っ立っているだけだった。 『でも、まだ近くに私をここに連れてきた声の主がいるかもしれないわ』 もしいなかったとしても、寒さを凌げる場所くらいはきっとあるはず。 『さあ、瑞!とりあえず歩くのよっ!!』 そう自分を叱咤すると、行く宛てもないまま足を進め始めた。 ――少し歩いて気づいたこと。 それは、どうやら私は森の中にいるらしいということのみ。 ずっと歩いてみてはいるんだけど、木に囲まれた状況に何ら変化はない。 もちろん人っ子一人、未だ見掛けられずにいる。 『さすがに疲れた……』 何しろ既に一時間近く歩きっぱなし。 そして誰にも遭わないどころか、森の中からすら抜け出せない状態……。 木、木、木と何一つ変わらない背景で、余計に頭が混乱してきていた。 『――本当どこなの、ここは!なんで誰もいないのよ!?』 そう叫んでみても、私の声が森の中にこだまするだけだった。 泣くまいと必死に堪えていたが、子供の時親とはぐれ迷子になった時のような……そんな絶体絶命な状況に涙が溢れてきた。 『お家に帰りたい……』 帰りたいよ……。 一人じゃない場所に。 ねぇ誰か来て……。 一人が一番怖いのっ!! 歩く気力も無くなり、近くに生えていた木へもたれ掛かるようにして、ずるずると体を滑らせ、そこにうずくまった。 寒い中に薄着で長時間いたため感覚は全く無い。 もう冷たいとか寒いとか、全く関係なくなっていた。 ――ここは何処……? ――あの声は誰……? ――セレネって……? ――何で誰もいないの……? ――私はなんで……こんな所に連れて来られたの? ただ答えの返ってこない疑問だけが頭を埋め尽くし、死への不安が増すばかりだった。 .
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