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一ヶ月前、恋が初めて実った。
味わったことのない幸福な時間に私はすっかり酔いしれ、有頂天になった。
こんなにも、こんなにも幸せな瞬間があったのかと思った。
しかし、その数日後突如別れを告げられた。
泣きつくシマもないほど無情な言葉。
付き合っていたというのも憚るほどに、ほんの一瞬の出来事だった。
事実を受け止められない私に、周囲は容赦なく現実を突きつけた。
私自身を擁護されても否定されても、彼のことを弁解されても非難されても…
私の気持ちの落ち着くところはどこにもなかった。
あるのは一つだけ。
彼が好き。
ただそれだけだった。
「意地になってんじゃない?」
近しい友人はそう言った。
そうかもしれない…そう思って冷却期間を置いた。
けれど、時が経っても彼のことを忘れることはできず、むしろ気持ちはずっと強くなる一方だった。
何をしても、何を見ても、彼と一緒にしたい。彼にも見せたい。そう思っていた。
もう二度と来てくれないとわかっているのに、会いに来てくれるかもしれないといつも待ちわびていた。
何事もなかったならば、希望いっぱいの楽しい恋のはずなのに、ふと我に返ると諦められない自分が惨めで情けなかった。
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