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「お望み通り帰ります」
言い切れば、いよいよショックを受けて瞳を動揺で揺らす。
もう帰るのか。呟くように寂しげにそう小さく口にして。
「いつもは帰れと言っても帰らないくせに」
「ええ、でもおにーさんは帰って欲しいんでしょう?」
「………当たり前だ、」
動揺を隠すことなく、というか隠せずに、声を震えさせながらそう言う勝利さんはここで初めて恥ずかしそうに目を泳がせた。
ああもう、ほんと毎日のようにここに通って、嫌がられようと夕飯ギリギリまで居座っていて良かった!
効果は見ての通り。押して駄目なら引いてみろって、本当によく効くよね!!
「………………だろ」
「え?」
「ゆ、夕飯食ってけばいいだろ。おふくろもゆーちゃんも喜ぶからな」
「いいんですか?」
「俺、は、嫌だがな!!ゆーちゃんが喜ぶなら仕方ない!!」
大見得を切ってそう言う彼は、僕が渋谷と仲良くするとまた拗ねる。
それはどっちに嫉妬してるの?聞けば僕にだと間髪入れずに答えるだろう。それでも頬を赤く染めているだけで、渋谷にも嫉妬してくれたのだと思える僕はなかなかに重傷……と、話が逸れた。
意地っ張りの彼に満面の笑みを向ける。
「じゃあ、暇なんで構ってくっださい」
「…………好きにしろ」
ふい、と目を逸らしてそう呟く。
そんなこと言われたら本当に好きにしてしまいそうだ。ああ、まだ我慢しなくては。
だってまだ告白だってしていないのだ。
「そういえばこの間………」
「ん」
ああもう早く絆されて流されて、僕に好きだと言ってください勝利さん。
僕はいつだって準備は出来てますからね!!!
「……おい弟のオトモダチ、その鞄から覗くコンドームはなんだ」
「あ」
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色んな意味で準備万端、の健ちゃんとツンデレしょーちゃん。
天秤は既にこちらに向きかけていても、見ないふりをする勝利がたまらなく可愛いです。
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