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「そういやぁ、雪ってどんな味がするんだろうな」
九つの情報を得る為に山を越える途中、寒いなと思っていれば案の定、雪が降ってきた。
雪だ雪だとはしゃぐぽちに、笑う空、綺麗だと感動する閨。
ふと気になって口に出したのは子供のような疑問で、空に眉を潜められた。
「……なに言うてんねん、雪に味なんかあるわけないやろ。元をただしゃあ水なんやから」
「それくらい知ってる」
ただ、なんとなく。
果敢無い氷の結晶が、唇に乗って淡く溶けた。
………………。
ふわふわと舞う雪。
元を糾せば水であるそれが、悪戯に空の唇に乗って。
「ほれ、なんも…………」
味なんかせんわ、続けたかった言葉は声に出せんかった。
犯人は至近距離で誇らしげに笑う。
ぽちは、目だけで探すと閨に目を塞がれていた。
次いで上がる体温。
ああほんま、ムカつく。
「……甘かったぞ?」
雪は無味無臭、それで良かったのに!
■理論が正解とは限らない■
だってそうだろう?
感情一つでこんなに変わる。
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