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side Crocodile
何度目かの絶頂を迎えて、綺麗にしいてあった筈のシーツに躯を沈め息を吐く。上質のベッドは柔らかく、無理な運動を強いても文句も言わず躯を休ませる。
葉巻を吸いたい。とりとめもなくそう思いながら目を閉じる。背中に鬱陶しい体温を感じて眉間の皺が寄るのを感じた。ああ、おれは一体何をしているのだろうか。
油断ならない相手に、そう、背中を向けているなんて。
先に声をかけてきたのは向こうだった。何処だったか等記憶の片隅にすらないが、第一声だけは忌ま忌ましい事に良く覚えていた。ピンクの巨体を揺らして、耳障りな低い声で、曰く“一目惚れした”。
以来暇がある毎におれの所へやって来ては酒を飲み聞きもしない武勇伝や部下の失敗談、市場の様子や天気の話というくだらない話すらやつはしてみせた。
おれはそれを追い払い、怒鳴り返し、時に無視して対応してみせる。やつにとってはその反応が新鮮で、面白い玩具を見付けた心持ちだったのだろう。それは今も変わらない。
おれはと言えば、経緯は省くが、うざったいやつが定期的に来る日を楽しみに思えるくらいには心を許してしまっていた。本当に、何をやっているのだろう。
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