君に届かなくても別に構いません

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恋をした。 【君に届かなくても別に構いません】 初恋は近所の幼馴染み。 両想いだった。 何故過去系なのかと言えば、それは俺がつまらない嫉妬からつまらないことをしでかしてしまったからで。 あいつには、償っても償っても、償いきれない。 そうして結局、想いを伝えたのはお互い最後の最後で。 彼女は遠くへ引越して行った。 後悔先に立たずなんてよく言うが、まさにその通りだ。 俺はとても臆病者だった。 多分、それは今も変わらない。 「…………ーい、おーいスイッチ聞いてるー?」 ふと耳に入ってきたのは、俺にとっての救世主の声。 馬鹿でヘタレで泣き虫で打たれ弱くて、なのにここぞという時にかっこよくなれる、そんな奴。 ジャンプヒーローは伊達じゃないというわけか。 「駄目だ、こいつ目ぇ開けたまま寝てるぞ」 『寝ていない』 「うわぁあっ」 カタカタと左手でキーボードを打てば、何もそこまで驚くことはないだろうと言いたくなるくらいに、驚く彼。 『あっは、お前驚きすぎー(´∀`)ww』 「ちょっと一発殴っていい?」 こんな日常を過ごせることさえ、君が来るまで考えられなかった。 あの絶望が、消えたわけではないけれど。 それは確かに、思い出として俺の過去に納められたのだ。 『ボッスン』 ちょいちょい、と手招きすると、不思議そうな顔をして寄ってくる。 んだよ、と声をかけてきたのと同時に、トレードマークのゴーグルと帽子を取りさった。 「うわっ、何すんだよ」 『……これが無いとお前は本当に平凡だな。ププッw』 「るっせぇよ喧嘩売ってんのお前?!」 涙目になって叫ぶきみ。 思わず笑いそうになって、誤魔化すようにその黒髪をグチャグチャとかき混ぜた。 「うわっ、今度は何だよ?!」 『……………別に』 「えっ、ちょっ、なぁほんと一発っつかヒメコ呼んでいい?」 ヘタレなくせに、味覚はお子様で好きな食べ物はミカンゼリーなくせに、この漫画の主人公で 「っちょ、いまお前二次元的に不味い発言したろ!駄目だぞこんにゃろ!!」 『…………(無視)』 「わざわざ無視って打つなよ傷つくわ!!」 『(笑)』 「ちょっ、ほんとお前どうしたの今日!!」 ………俺の、好きな人。 恋をした。 二回目の恋。 「好きなんだ」 「へっ、なんか言った?」 『いいや何も』 君に届かなくても別に構いません。  
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