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【風邪をひいたら安静にしとけ】
風邪をひいた。
ここのところ冷え込んだり暖かかったりで、気温の変化に体が耐え切れず。
さらには、攘夷浪士の活動が最近活発になりてんやわんや……。
「風邪引くなんざ、ずずっ、軟弱な証でさァ」
鼻を啜りながら言うな馬鹿。
……………。
それが昨日の話だ。
そして今、俺の目の前にはゆらゆらと旨そうに湯気を立てている粥の乗った、レンゲが差し出されている。
レンゲから先には当然ながら人の手があった。その手の主は俺の可愛い恋人、山崎退だ。
「どうしました?食べないんですか副長」
いや、食べる。
もちろん食べる。ぜってぇ食べる。
…けどよぉ、これってどう見ても………
「はい、あーん」
な状態じゃねぇ?
それも山崎のやつ割烹着なんか着てるからほら、なんかもう新婚夫婦に見えちゃうじゃねぇのこれ。
「もー、ほら、早く食べないと冷めちゃいますよー」
うああああ可愛いなおいィィ!!
なにお前いい歳して口尖らしてんだよ!!なんだ、狙ってんのか!狙ってやがんのかテメェええええ!!!
「副長ー?ったくもう……よっと」
ガッ
「っ?……、!!!ぅ、ああちぃいいいぃぃ?!!!!」
えっ、何、ちょっ、あちぃいぃぃ!
口ん中になんか突っ込まれた!粥かこれ!!あちぃい!!!
でも吐き出さねぇ!意地でも吐き出さねぇぞ!!!
「……………っ、」
「大丈夫ですか副長ー」
「………やぁまぁざぁきぃぃぃい………」
「はいぃっ」
「お前、痺れ切らしたからって予告もなしにレンゲ人の口ん中に突っ込むやつがあるかァ!!」
「すすすすみませぇんっ!!」
ああ俺ってなんて説明的。
つか怒鳴ったら山崎のやつ涙目んなったんだが。ビビりまくってんだが。ウサギの耳が見えるんだが。
………………。
「責任、取ってくれるよなァ?」
「は?いや、あのー、嫌な予感しかしないんですがー………」
にやりと笑って言ってやれば、山崎は口を引きつらせて一歩下がった。
下がったので追いかければ、また下がる。追う。下がる。
……まあこれが続けばどうなるかは分かるな?そう、そうゆーこった。
トン、
「!!うわ、かかか壁……っ!」
「後がねぇなぁ山崎ィ………」
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