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   ──全ての物事には表と裏がある。  華やかな表舞台の裏には泥に這いつくばって働く者がおり、その裏無しに表は成り立たない。  人々の笑顔や明るい声が行き交う繁華街の片隅に、それはあった。廃ビルや荒れ地が広がり、行き場を無くしたホームレスやジャンキー、犯罪者など多くのならず者がはびこるその街は、歪んだ柵や錆びた鉄線、崩れ落ちたぼろぼろの壁が垣根を作り、その街全体を取り囲んでいる。  それは表と裏を分ける国境と呼ぶに相応しいほど巨大なバリケードだった。賑やかな繁華街と退廃した街を分ける巨大な壁。  有数のスラム街であるそこでは、麻薬取引、人身売買などありとあらゆる犯罪が、そして死までもが日常だった。いつ誰かここに来て、いつ誰が死んだのかも分からない、ここはそういう場所だ。  一般人はおろか、国家権力すら介入しようとはしない。ここに流れ着く者は、本当に行き場を無くした者達だけである。  巨大なバリケードで外界から隔離されたこの街は、退廃の街──通称“第参区”と呼ばれている。  image=231129609.jpg
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