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私の彼氏は3つ上の社会人だ。
彼の名前は須藤司。
社会人と言っても今年高校を卒業したばかりで、まだ新入社員という位置付け。
仕事は機械系の仕事で、週4回程工場に働きに行っているらしい。
彼氏と言ってもデートはろくにしないし、逢えるのはバスケのクラブがある水曜日だけ。
お互いすれ違う日が多いのに、気持ちがひとつになってから3ヵ月が経過していた。
ただ、クラブという方程式があるから私達は成り立っている。
それまでの事。
「和を持って尊しと成す。この意味分かるか?」
彼は煙草を吹かしながら言った。
私は車のボンネットに焦点を合わせて首を横に振る。
「……あのな、とりあえず嫌いな人が居ても仲良くしとけって事だよ。俺も社長や工場長は嫌いだけど、嫌な顔ひとつせずニコニコ笑ってるよ」
「へぇー」
「へぇーってそれだけかよ!折角良い事いったのに…まったくお前って奴は……」
「だって嫌いな人いないもん」
「はぁ……。ある意味すげーよお前……」
「本当?あたし凄い?」
「ああ凄い凄い。びっくりだよ…」
「えへへ」
私は笑った。
ただ純粋に、僅かな邪気もなく。
司は車の携帯灰皿に灰を落とす。
その灰からはまだニコチン等の有害物質を含む煙が出ている。
まったくこのニコ中め。
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