接近

2/8
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
あのお昼以来、前にもまして奏くんは良く話しかけてくれた。 相変わらず奏くんの周りにいる女子達からは色々言われた。 言われた時は、また黒い感情が湧き出してくる。 胃がキリキリ痛んで、吐き気もする。 でも学校には休まず行っていた。 別に何か意地悪をされる訳でもないし、何よりもわたしの王子様に会いたかった。 奏くんの側に居る時だけ、わたしの気持ちは穏やかだった。 もう奏くんが居ない生活なんて考えられない…。 奏くんが欲しい…。 優しい笑顔も、クルクル変わる表情も、たまに見せる寂しそうな顔も…。 全てが愛おしい…。 何度も夢を見た…。 わたしと奏くんが手を取り合って笑っている夢…。 詩音と響くんが仲良くしているのを見ると、わたしと奏くんに重ねてしまう。 だってわたし達は双子。 同じでしょ? 4人でご飯を食べる機会も増えた。 詩音は毎回少し嫌そうな顔をしていたけど、わたしにはどうでも良かった。 そのころから、わたしは少しずつ前を向いて歩けるようになった。 まだ長いけど、前髪も少し切った。 ほんの少しだけど、お化粧もした。 奏くんは、そんな些細な事にも気づいてくれた。 幸せだった…。 だんだん、自分だけのモノにしたくなってきたんだ…。 奏くん…愛してるの…。 わたしを見て…。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!