接近

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何とか全ての授業が終わり、みんなが帰り支度を始めている。 わたしも帰り支度をしていた。 教室の中も人がまばらになり、少し静かになった時だった。 「あっ!!」 担任が何かを思い出したのか教室をキョロキョロ見回して、やがてわたしと目が合うとこちらにやってきた。 「琴月、お前学級委員だよな?どうしても今日中に渡さなきゃいかんプリントがあるんだ。霜柳の家まで持ってってくれないか?」 そう言ってプリントを差し出した。 やったー!! 奏くんの家に行ける!! 学級委員やってて良かった!! わたしはすぐに了承すると、奏くんの家の住所を聞いて、早足で学校を後にした。 教えてもらった住所を頼りに、奏くんの家に向かう。 足取りは軽い。 スキップしそうな勢いで足を進める。 嬉しい!! 今日学校に行って良かった!! 学級委員で良かった!! これは運命かもしれない…。 今まで頑張って耐えてきたわたしに神様がくれたプレゼントなんだわ!! 途中スーパーに寄ってプリンとスポーツドリンク、簡単におかゆの材料を買った。 閑静な住宅街。 小さな公園には子供たちが汗をかきながら元気よく走り回っていた。 わたしは珍しく穏やかな気持ちでその様子を眺めて微笑む。 わたし、きっと今素敵な顔で微笑んでるわ。 奏くんにも見て欲しい。 公園の前にある大きなマンション。 この辺りは裕福な人達が住む所で、大きなマンションや家が並んでいたが、書かれていた住所にあったマンションは群を抜いて大きかった。 わたしはマンションを見上げる。 大きいな…。 奏くんはこんな所に住んでるんだ…。 急に現実に戻された気がして、心臓が激しく動きだす。 落ち着かなくちゃ…。 大きく深呼吸をしてから、間違えないようにゆっくりと部屋番号を押して、チャイムを鳴らした。 心臓が激しく揺れて吐きそうだ。 なんだか眩暈もする。 背中に冷たい汗が流れて、握っていた手も汗ばんでいる。 チャイムを押してしばらく返答が無かった。 どうしよう…。寝てるのかな…。 もう一度呼ぼうと思って手を伸ばした時、 「…はい。」 かすれた声が聞こえた。
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