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いつもとは違う元気のない声。
大丈夫かな…。
「あ、あの、わたし琴月です。愛音です。学校でプリントが…えっと、その…。」
うまく話せなくて焦ってしまう。
何て言ったらいいのか分からなくなってしまった。
「愛音チャン?わざわざ来てくれたの?…ちょっと待って、すぐ開ける。」
言ったと同時にオートロックが外される音がした。
「入って。」
奏くんはそう言ってインターホンを切った。
良かった、入れてもらえるんだ。
わたしはもう一度深呼吸をしてからエントランスをくぐった。
入ってすぐに大きな吹き抜けの中庭が見える。
建物は口の字型になっていて、真ん中が中庭。
それを四方が大きいガラスで囲われている。
学校の中庭とは大違い…。
きれいに手入れが行き届いてあり、まるで小さな公園みたいだった。
わたしはその中庭を横目で見ながら、エレベーターへ向かう。
奏くんの部屋は8階。
ボタンを押すとエレベーターは音も無くゆっくりと動いた。
8階に着いて、少し辺りを見回して奏くんの部屋を探す。
…あった。…あれ?
奏くんの家の表札にはフルネーム…。
となりの部屋は響くんのフルネームが書かれていた。
すごい、1人1部屋なんだ!!
無意味に感激しながら奏くんの部屋の前で立ち止まる。
額の傷が見えていないことを確認して、部屋の呼び鈴を鳴らした。
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