わたし

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教室に着いたわたしは自分の席に座って、何をする訳でもなく視線を机に落としていた。 周りではテレビ番組の話や昨日の夕食の話などをしているらしく、とても騒がしかった。 特に気にする事もない。 わたしはいつも休み時間は1人でいる。 勉強をしに学校に来ているんだもの。 ツラいと感じた事なんてない。 そういえば…。 まだ彼が来てないな…。 顔を少しだけ上げて教室を見回した。 あっ!! ちょうど教室に入ってくる彼を見つけて、わたしの頬は紅潮していく。 彼は友達と楽しそうに話をしながら入ってくる。 わたしの視線に気付いたのか彼がこちらを向く。 うわぁ!!目、目が合った!! わたしは恥ずかしくて慌てて視線を机に戻した。 彼はゆっくりと自分の席に向かう。 彼の席は…。 わたしの隣。 わたしはさらに恥ずかしくなって体を縮めて小さくなった。 「おはよ、愛音チャン。」 弾かれたように顔を上げて、それでも彼の顔を見れずに前を向いたまま 「お、おはよう…」 と言った。 わたし今声震えてなかった? うわ、恥ずかしいっ!! 湯気が出そうに体が熱くなってるのを感じていると、ははっと彼は笑った。 「愛音チャン、面白いね。」 笑ってくれた…。 本当に笑顔が素敵な人…。 わたしの王子様。 …脳内で、だけど。
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