わたし

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授業も半分終わり、お昼休み。 わたしはいつも通り一人でお弁当を食べる。 今日は天気がいいから中庭にでも行ってみようかな。 お弁当を持って教室を出ようと立ち上がる。 「愛音チャン、どこ行くの?」 奏くんがわたしを不思議そうに見て言った。 また話しかけてもらっちゃった! わたし、今日はすごくラッキーな日だわ! とても可愛い笑顔を向けたかった。 あれ?笑顔ってどうやって作るんだっけ? わたし、今どんな顔してるのかしら…。 奏くんの周りにいる女の子達が嫌な視線をわたしに向ける。 また無意識に額の傷を隠すように前髪を触って俯いた。 「天気がいいから中庭でお弁当食べようと思って…。」 せっかく話しかけてくれたのに、ちゃんと顔を見て話も出来ない…。 お願い、わたしを見ないで…。 奏くんの周りの女子達がわたしに聞こえる様に 「奏ー。そんな子ほっときなよ。」 「早くご飯食べよー。」 「響の彼女の姉だからって奏が気にする事ないじゃん。」 と言った。 分かってるよ!! わたしは詩音の姉だから話しかけてもらってるって!! カッと全身が熱くなるような感じがした。 息が苦しい。 「詩音チャンはきれいだからいいけど、この子には響と奏に近づいてもらいたくないわ。」 な…何それ…。 わたしは話をする事も許されないの…? 「あっ愛音チャン!!」 奏くんの声が聞こえたけどわたしはお弁当を持ったまま教室を飛び出した。 わたしの居なくなった教室は笑い声で溢れていた…。
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