わたし

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「おーい!!響ー!!」 瞬間、わたしは弾かれたように顔を上げる。 中庭の向こう、渡り廊下から奏くんが手を振って叫んでいた。 あぁ…わたしの王子様。 手には購買で買ったらしいパンの袋が握られていた。 奏くんは嬉しそうに笑いながら、こちらへ走ってきた。 やだ、嘘、何で!? さっきの教室での出来事もあり、わたしは何だかいたたまれない気持ちになってお弁当をぎゅっと握り締めた。 でも目線は奏くんから離せない。 吸い込まれそう…。 奏くんはそのままわたしの横に勢いよく座った。 心臓が飛び跳ねる。 「奏、珍しいな。どうしたんだ?」 「いやー、愛音チャンが中庭で飯食うって言ってたからさー。オレも一緒に食べようと思って。そしたら2人も居るの見えたからさー。」 奏くんは詩音にこんにちは、と笑いかけて、詩音も笑顔を返していた。 わたしが言ったから…? わたしに愛に来てくれたの…? すごく嬉しくて、信じられなくて、奏くんをみつめたまま、口を大きく開けて固まってしまった。 奏くんはわたしを見て、ははっとと笑ってから、 「一緒にいいかな?」 と爽やかな笑顔で言ってくれた。 もちろん!! わたしは縦に大きく首を振って答えた。 奏くんは良かった、と言って、買ってきたパンをほおばりだす。 本当に夢見たい…。 わざわざ来てくれるなんて…。 もしかしてわたしの事…。 ないない!!あり得ない!! 夢は見ているだけでいいの。 傷つくのはもう嫌なの…。 こうして側に居れるだけで十分幸せ店。 だからお願い。 何も望まないから…誰も邪魔しないで…。 奏くんは響くん、詩音と楽しそうに話していて、たまにわたしにも話しかけてくれた。 高校に這い居て誰かとお昼を一緒にしたのなんて初めて。 こんなに楽しいなんて。 楽しくて、嬉しくて、この時間だけは、自分の嫌な感情も、クラスの女子の事も忘れていられた。
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