プロローグ

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夏真っ盛りの日差しを広葉樹が遮り、斑に地面を照らす 川が、2人の子供が騒いでいるのと相反する様に穏やかに流れている 「いっちー!」 「もぉー!またその名前!僕は一紀だって!」 僕の名前は稲葉一紀。 今一緒にいる、幼なじみの紅川愛華(あかがわあいか)ちゃんに何故か「いっちー」と呼ばれている。 僕をからかう愛華ちゃんの黒髪ショートヘアーが、風に揺れて靡く。 頭のてっぺんに一本だけピョコンと毛が立っているのは、たぶん唯一のくせっ毛 「いーじゃん~!いちって名前に入ってるんだから!」 「愛華ちゃん漢字読めるの?」 「ん~ん、ママにいっちーの名前教えてもらったの!ねぇ~そんなことより、そのおもちゃかしてよ~」 「えっ!?いやだよ!買ってもらったばかりなんだから」 僕たちはおもちゃを取り合う。それは少し前に、お父さんに買ってもらったおもちゃだった。 自分がそんなに遊んでいないのもあって、愛華ちゃんに渡したくはなかった。
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