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息遣いが荒くなる中、村の全景が見えはじめてきた。
黒煙は落ち着きを見せてきてはいるが、まともな家の形が確認できない。
近づくにつれて不安がよりいっそう積もっていくだけで、喜びや安心という言葉はかけらも見せなかった。
「嘘……でしょ?」
村の入口まできてカヤは一言だけいうと地面にへたりこみ、他にも数名の生徒は、腰が砕けたように座り込んでいた。
視界に入るのは、微かに燃え続けている全壊した建物と、道に広がった赤い水溜まり。
耳には燃える家の崩れる音と、自分の心音しか聞こえない。
鼻は木が燃える香ばしい匂いと、普通に生活していればまず嗅ぐことのない異臭が漂っていた。
そう……。それは、ヒトの燃える臭い……。
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