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むせ返るどころか、強烈な吐き気のする異臭の中、沈黙に耐え兼ねて、一人の生徒が走り出した。
「どこに行くのです。危険ですから戻りなさい」
すかさず先生が制止をするが、その生徒は「家に帰る」とだけ言うと、走り去ってしまった。
それにつられるように次々と走り出す生徒を先生は必死に制止を呼びかけていたが、効果がないとみて「ここに待機していなさい」と、残った生徒にいうと、直接連れ戻しに向かった。
その場に残った生徒は、立ち尽くすガイヤと地面にへたり込んでいるカヤ、そして寄り添うように抱き合って、体を小刻みに震わせている最年少のユキとリクだけだった。
ガイヤはカヤに近づくと、小さく縮こまった肩に手を置いた。
「立てるか?」
「多分……。でもなんで?」
「俺は家に戻る。一緒に行こう、カヤを置いていきたくない」
「わかっ……た」
ふらつきながら立ち上がるカヤを支えながら、ユキとリクの方を向いた。
「二人はここに残って先生を待っててくれるかな?」
ガイヤの言葉に微かに頷くと我慢しきれなくなったのか、大声で泣き始めた。本当は、一緒に行きたかったのだが、今の二人を見る限り、連れて歩くなんて無理だろうと思った。
二人が頷いたのを確認すると、カヤに肩を貸しながら家に向かった。
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